◆ 沖縄島のオオクチバス

嶋津 信彦氏


沖縄島のオオクチバスは,1963年頃に米軍基地内にある恩納ダムで遊漁を目的として放流されたものが最初とされている(諸喜田,1984)。
以来,大城ダムや龍譚池,南風原ダムなどで生息が確認されている(幸地,1997)。近年の生息状況を明らかにするため,2004年以降に大城ダム,南風原ダム,千原池,比謝川,天願川,億首川において調査を行った。

オオクチバスは,大城ダムでは2004年の3回の踏査で1個体,千原池では2004-2006年の20回以上の踏査で4個体,比謝川では2005-2007年の20回以上の踏査で200個体以上,億首川では2007年以降の15回以上の踏査で斃死した1個体が採集された。
南風原ダムでは2005-2007年に20回以上,天願川では2006年に5回踏査したが採集されなかった。天願川水系山城ダム貯水池では2006年に複数の幼魚が目視確認された。

千原池で採集された3歳の雄と4歳の雌は,それぞれ標準体長が38cmと43cmであった.比謝川で採集された個体は,年齢0-3歳,標準体長9-31cmであり,満1歳で標準体長13cm,2歳で18cm,3歳で23cmに達すると推定された。

産卵期は主に1-4月であると推定された。胃内容物調査では,餌の大部分はテラピアなどの外来種であったが,タウナギのように琉球列島で絶滅が危惧されている種も見つかった。比謝川の支流与那原川の上流にある倉敷ダム貯水池内ではオオクチバスが定着しており,その一部が時折の越水とともにそこから流出し,比謝川水系全域に分散していったと推察された(嶋津,印刷中)。

沖縄島のオオクチバスは,比謝川水系を除いて劣勢な生息状況にあった.比謝川でもテラピア類が優占しており,目立つ存在ではなかった。しかし,これまで確認されていなかった水域で今回新たに発見されており,分布の拡大が認められることから現在生息が確認されている水域では容易に採集できない程度にまで駆除を行い,拡散源となるのを防ぐ必要があると思われる。


引用文献
諸喜田茂充(1984) 帰化動物.沖縄の生物日本生物教育会沖縄大会記念誌,377-383.
幸地良仁 (1997) 淡水魚類.沖縄の帰化動物.沖縄出版,沖縄,68-121.
嶋津信彦 (印刷中)沖縄島比謝川に侵入したオオクチバスの生態学的研究.人と自然.



BE-PAL かくまつとむ氏の質問
沖縄島のバス釣事情に関して教えて貰いたい。

嶋津氏のコメント
バサーはいるが数は多くない(周囲が海なので海釣人口が多い)。


姫路市   市川氏の質問
バスの胃から検出されたトンボは成虫?幼虫?

嶋津氏のコメント
大部分が成虫である。幼虫は少なかった。


琵琶湖博物館主任学芸員 中井氏の質問
現状のバスの生息域にリュウキュウアユは生息するのか?またブルーギルの影響はあるのか?

嶋津氏のコメント
現状ではバスの生息域にリュウキュウアユはいないようである。ブルーギルは生息するが数は少ない。10尾程度しか捕獲経験はない。

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