◆ティラピア防除の理論と実際

嶋津 信彦氏



ティラピアとはスズキ目シクリッド科に属す魚の一部を指す。ピラニアではない。ティラピアは、アフリカや中近東を原産とし、国内ではモザンビークティラピアOreochromismossambicus、ナイルティラピアO.niloticus、およびジルティラピアTilapiazilliiが定着している。食用として持ち込まれ沖縄や小笠原といった温暖な地域や温排水が流れ込む様な水域で定着している。
前2者は容易に交雑し、2010、2011年の調査では同島161水系で確認されている。一番多く養殖されているのはナイルティラピアである。国内ではイズミダイ、チカダイ、クロヒメダイ、マシュウダイ、ユダイ等の名称で呼ばれている。モザンビークティラピアは、世界の侵略的外来種ワースト100にも掲載されている。ティラピア類は、世界の淡水魚のうちコイ類に次いで2番目に多く養殖されている。主な養殖対象種は、ナイルティラピアである。

本種は最大で標準体長60cm、体重4.3kgに達する。雌よりも雄の成長が速いため、雄だけを生産する様々な方法が研究されている。本種の性は、人と同じく性染色体のXとYの組み合わせで決まり、XXで雌、XYで雄となる。本種は、初期発生時に雌性ホルモンを投与されるとXYの個体であっても繁殖可能な雌になる。これにより雄しか産まれないYY雌の作成も可能とされる(図1)。
YY集団で養殖すれば、自然下に流出しても定着は起こらない。また、仮に最高齢が10歳、各齢の生残率が50%、再生産が2歳以上の雌の個体数に対して一定、総個体数が100,000個体の個体群があったとして、1歳のYY雌を毎年1,000個体導入した場合、野生型の個体数は雌で100年後に、雄では123年後に0となる(図2)。
生息密度が下がれば生残率等が上がるので減少の度合いが加速するのではないかと思われる、また駆除活動を行ってYY雌の度合いを増やす様な活動を行えば更に効果が上がる事が期待できると思われる。
総個体数は一度増加し、7年後には導入開始前の109.5%となるが、以降減少し、104年後以降には13.9%で一定となる。
この時点でYY雌の導入を止めるとさらに20年後には個体群は絶滅する。採集による駆除活動を行い、導入数を増加すればこれらの年数は短くなる。また、この方法は特定外来生物アメリカナマズIctaluruspunctatusでも技術的には可能と考えられる。

YY雌の作成を人為的性転換のみで行う場合、いずれの個体が性転換個体であるかは、その個体の子供の性比で確認できる。しかし、それは大変時間がかかる方法であり、また個人では必要な設備を準備することも難しい。そこで染色体操作による完全ホモ型の雄をつくることを試みている。
まず採卵する。卵子の染色体(XX)を紫外線で破壊し、媒精後、分裂した精子の染色体を対にするために高温処理で細胞質分裂を阻害する。これらの処理により作成された個体は、雄であれば必ずYYとなる。この場合の生残率は0.07%と低いがティラピアの場合は1尾の雌が数百個体の卵を産むので仮に卵が1万個集められれば7尾位は生き残るので現実に作り出すことは可能ではないかと思われる。
理論上この雄の精子の染色体は全て同じものになる。これを用いて同様に処理をし、一部を性転換させれば完全ホモ型YYクローン集団が作成される。クローンの繁殖集団が作られれば変異とかが少なくなるのではないかと思っており導入した場合の反応というものもある程度予測できると考えている。

実際にやってみようと思い材料を集めてみた。淡水硬骨魚用リンゲル液、殺菌灯、デジタル紫外線強度計等を購入し、自宅より1時間程離れた場所に家賃1万円で家を借り飼育舎にした。1.8tのフレームプールを二つ設置し光調整を行い自動給餌機を二つ置き飼育設備を整えた。しかしなかなか良質な卵を大量に確保する事ができず水温が下がって来て餌を食べなくなり餌が過剰になってきて水質悪化で全滅したのが実際のところである。今後頑張ってやっていきたい。


沖縄島におけるティラピアの分布はモザンビークティラピアとナイルティラピア、その交雑種合わせると2010、2011年の調査では161水系に及んでおりこれは塩分耐性が強いので自力で海を介して分散しているのではないかと思われる。

この魚を駆除するにはこれしか方法が無いと思っているのでよろしく御願いします。




土浦の自然を守る会 萩原氏の質問
これはおそらくウリミバエ駆除の成功例と同じだと思うが今はYY雌の作成に挑んでいる段階だと思うが失敗したというのはどの段階で失敗したのか?

嶋津氏のコメント
ほぼ最初の卵を採る段階である。一方で女性ホルモンを与えて性転換個体を作るのもやっているがそれも10尾位作るつもりが3尾位しか残らなかった。


うおの会 中尾氏の質問
個人レベルの研究を超えていると思うがどなたか協力者はいらっしゃるのか?

嶋津氏のコメント
去年までは放送大学で学生をしていたが親が仕送りをしてくれていました。

うおの会 中尾氏のコメント
どこかの研究機関でやっているのかと思ったが個人研究という事で驚いた。

琵琶湖を戻す会 高田氏のコメント
どなかたスポンサーになれる方がいらっしゃったら名乗りを上げて下さい。

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