お気に入り特撮





第3回 「帰ってきたウルトラマン」#25「ふるさと地球を去る」

(1971年9月24日放映 円谷プロ作品 脚本:市川森一 監督:富田義治 特殊技術:大木淳)


さてお気に入り特撮も第3回にしてようやくTV作品の登場です。TV作品はやはり一番好きなウルトラシリーズ(円谷プロ作品) から始めると最初から決めてましたが第1期作品は何か今更という感じがするので第2期作品の中で自分が好きなエピソードから で取り上げてみました。 「帰ってきたウルトラマン」の傑作と言ったらグドン、ツインテール編、テロチルス編、シーモンス、シー ゴラス編等の前後編かあるいは所謂11月の傑作群が取り上げられる事が多いと思いますがやや地味なイメージがするものの スケールの大きさ、アイデイアの奇想天外さ、映像の迫力、シリアスなドラマが光るこのエピソードを取り上げてみました。

建設中の高級マンションでから突然コンクリートの部分だけが宇宙空間へ飛び去るという事件が起きた。事件を調査したMATは コンクリートに使われてた砂利が群馬県の愛野村から産出された物であるという事実を掴み郷と南の両隊員が調査に向かった。

調査に向かう途中で南は自分が少年時代、「じゃみっ子」というあだ名をつけられていじめられていたことを郷に告白する。 じゃみっ子というのは蚕で繭を作らない個体の事であり、転じて親から糸を吐くことを教えられなかった=誰からも構われない 子供の比喩に使われていた。

郷と南の調査で、愛野村全体が隆起していることが判明。実はこの村は大昔にザゴラス星から飛来した隕石の上に位置しており ザゴラス星の引力が作用して隕石は宇宙空間に飛び出そうとしていたのだ。
そして怪獣が現れ暴れ出した、その怪獣は隕石の中に生息していた微生物が変異したものであった。

MATはただちに作戦本部を村に設置し村民の避難及び怪獣対策の準備を始めた。その頃奇しくも「じゃみっ子」と呼ばれてい じめられていた六助という名の少年が愛野村の小学校におり彼は作戦本部からMATガンを盗み出してしまった。 郷と南は彼を探し出しMATガンを盗み出した訳を問い詰めるたところ六助は

「怪獣と戦うんだ!」と叫んだ!


自分の少年時代とそっくりの境遇を現在の六助に見いだした南は郷に「この子に戦わせてやってくれ。生まれて初めて何かと戦おう としてるんだ」と言い3人で怪獣の攻撃を始める。
しかしその時ついに隕石が3人と怪獣を乗せたまま空中に浮上し始めた。郷はウルトラマンに変身する。空中に放り出された 南と六助をウルトラブレスレッドで救出するとウルトラマンは怪獣を隕石に激突させ倒した。

南「故郷をなくしても、故郷で戦った思い出だけは一生忘れないよ。これから先、どこの地に移り住んでもくじけそうになった ら思い出すんだ。僕は昔怪獣と戦ったことがあるんだ!」ってな。

すると六助は

「また起こらないかな。今度はもっと撃ちまくってやる!」

と言ってMATガンを空に乱射し始めた。南は顔色を変えてそれを制止する。

「もういいだろう!」


美しい夕焼けの中をMATジャイロが3人を迎えに来た。あんな大事件がまるで嘘だった様に.......。

よくもまあこれが30分番組一本の中に納まったなあという位中身が濃い作品です。村が丸ごと隕石にのって地球から飛び出す という奇想天外かつスケールの大きいアイデイア。冒頭から建設中のマンションからセメントだけが空中に飛び出す驚異の ミニチュアワーク、浮上した隕石上で怪獣とウルトラマンが戦うシーンの大胆な合成カット。南の少年時代と現在の六助の 境遇が見事にオーバーラップする人間ドラマ。ウルトラブレスレッドの意表を突いた使い方。そして衝撃のラストシーン。

富田義治監督は雑誌のインタビューの中でこのラストシーンについて「少年のヒロイズムの中にある危険性の様なものを表現 したかった」という旨の発言をされてましたがよくよく考えてみればこれは「ウルトラセブン」に例えて言えば「ノンマルトの使者」 と「史上最大の侵略」の両作品のテーマを一本のエピソードの中で描いてしまった様なものであります。


それでは、また次回......。

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