第十回「外来魚情報交換会」(2015.01.24-25 : 草津市市民交流プラザ 大会議室)
◆ため池におけるオオクチバスの放流予測モデル


岐阜大学応用生物科学部附属野生動物管理学研究センター          角田 裕志氏


外来種が一度定着すると、その防除には多大なコストを要することとなり、多くの場合は根絶が困難となる。外来種対策としては侵入を予防することがより効果的であり、優先的に取り組むべき課題である。遊漁の目的で意図的に導入される外来魚類の侵入防止に関しては、その魚類自身による自然分散だけではなく、放流者(釣り人)による意図的放流も考慮しなくてはいけない。

本研究では、自然分散が制限された農業用ため池群における特定外来生物オオクチバス(Micropterussalmoides)の出現パターンについて「種の分布モデル/生息地モデル」の応用を利用して解析を行い、影響を与える要因について放流者による放流場所の選択性と関連付けて議論した。また、解析から得られた予測モデルを用いた侵入リスク管理手法についても提案した。

米国ではコクチバスや観賞魚の違法放流が多いので「種の分布モデル/生息地モデル」を応用しての分析が結構出てきている。

岩手県奥州市の48箇所のため池において、オオクチバスの在・不在と池の環境条件並びに地理条件を調査した。4箇所で違法放流が発見された。この地域のオオクチバスは2000年前後に入ったと言われている。築造用廃分離型水路であり多くは土地改良区が管理している。地域の自然環境保護は積極的に行われていてバスの駆除も行われている。

オオクチバスの在・不在を応答変数、池の環境条件・地理条件を説明変数とした一般化線形モデルによる解析を行い、オオクチバスの出現をよく説明する変数を含むモデルをモデル選択によって得た。

解析の結果、池の面積、コンクリート護岸率、市街地中心部への距離の3変数を含むモデルが選択され、面積が大きく、護岸率が高く、市街地により近い池においてオオクチバスが出現しやすいことが示唆された。面積は地図上または現地で放流場所を探す際の池の見つけやすさに(小さい池は地図に記載されていない)、コンクリート護岸は放流時の水辺の近づきやすさに、市街地からの距離は放流者の居住地との近さに、それぞれ関連する要因であったと考えられた。また築造用廃分離型水路の為、溜池のバスが他の溜池に流出するという様なケースは想定していない。

解析によって得られた係数を用いて予測モデルを構築し、オオクチバスの侵入(放流される)確率を算出してポテンシャルマップを作製した。
さらに、各池における在来魚類の生息状況や駆除の実施状況などを整理して、「侵入確率」と「侵入した場合の影響の深刻度」に基づくリスク評価を行った。このリスク評価の結果は、優先的に侵入を防止すべき池(またはエリア)を抽出し、違法放流の監視・パトロールや警告看板の設置場所の検討の際に役立つことが期待される。

その一方で、本研究対象地域は人家がまばらな農村景観であり、都市近郊や山間部とは異なる景観構造である。景観構造が異なる地域では地域独自の放流予測モデルを構築する必要があるだろう。



※本研究内容は下記論文として発表済みです。
TsunodaH,MitsuoY,EnariH(2015)Predictingpatternsofintentionalintroductionof
non-nativelargemouthbassintofarmpondsinnortheasternJapan.Ecological
Research30:inpress.


土浦の自然を守る会  萩原氏の質問
私も釣り人なのでどういう説明変数というかどういうところに釣りに行きたくなるという気持ちがよく分かり興味深く拝聴した。その説明変数の中で二つ程意見がありまして一つはアプローチというかアクセスが条件になっていると考えていて釣り人は池への距離が例えば50mの場合、その50mを藪こぎしていくのは嫌なのでそういう条件を説明変数に入れたら?という事と釣人は駐車スペースの事を気にするという事が挙げられる。ここに駐車したら農家の人に怒られるという様な事があるのでその様な条件を入れられたらどうか?と思う。

角田氏のコメント
最初の藪こぎに関する話であるが今回のケースは農業用溜池であるので大部分で草刈りがされているというのと池の堤防まで農道等が整備されていて車でダイレクトに行ける様な場所が殆どだった。幹線道路に隣接している池もあって池へのアクセス状況は非常に良いという事があった。コンクリ護岸率の高さは足場の良さや水辺の際まで入れるという条件になっていた。


琵琶湖博物館主任学芸員  中井氏の質問
植被率の話があったが池の表面を覆う様な植物だとかなり季節的な増減もあると思うがどの様な時季に見られたのかという事とどの様な種類の植物だったか教えて頂きたい。

角田氏のコメント
調査は六月から十月で夏はかなり池の表面を植物が覆う。秋になると枯れてくるのでその平均値を採用している。植物の種類はカナダモの様な沈水植物はあまりなくヒシやヒルノムシロの様な浮葉性の植物が多いのとアシの様な抽水植物の面積の合算を使用している。


琵琶湖博物館主任学芸員  中井氏の質問
貧酸素も問題等が絡んでくると浮葉性の植物の最大量の様な問題も絡んでくると思うが現場で見ておられて何か発見されたか?

角田氏のコメント
浮葉性の植物が完全に繁茂してしまって管理が放棄された池はバスも絶滅してしまったというのがあった。しかし多くの池では農業用の池は流入水路が存在したので溶存酸素が一定に保たれていた。


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